新型コロナウイルス感染症について
新型コロナウイルス感染症の拡大が止まりません。
先日,志村けんさんが新型コロナウイルス感染症により亡くなるという報道に接し,大きな衝撃を受けるとともに,事態の深刻さを改めて認識しました。また,私の通っていた飲食店の中にも,閉店に追い込まれてしまったお店があり,このままでは取り返しのつかないことになるのではと危惧しています。
自分が被害者にも加害者にもならないよう,手洗いやうがい等,今できることを精一杯行いたいと思います。
なお,弊所では,感染防止のため,打ち合わせや法律相談の際,弁護士や事務局がマスクを着用させていただくことがありますのでご了承ください。
さて,3月号のかなで便りでは,新型コロナウイルス感染症の関係で経営者の方からご相談を受けることが想定されるものについて,いくつか取り上げてみたいと思います(なお,本投稿時点での情報に基づくものであり,お読みいただくタイミングによっては変更されているものもあり得ることを申し添えます。)。
■コロナで売り上げが減少した場合の融資制度について
→経済産業省のウエブサイト(https://www.meti.go.jp/covid-19/)や,ひまわりほっとダイヤルのウエブサイト(https://www.nichibenren.or.jp/ja/sme/20200319.html)が参考になりますのでご参照ください。
■資金繰り対策の相談窓口について
→まずは取引先金融機関にご相談されることをお勧めします。次に,日本政策金融公庫(支店),商工組合中央金庫,千葉県信用保証協会,商工会議所・商工会の支部などにも相談窓口ができています。
ただし,すでに元利金の返済が止まっているとか,間もなく資金ショートとなるような場合には,借入のある金融機関の預金口座に預金があると,預金が凍結されることも考えられます。そのようなおそれがある場合には,先に弁護士の法律相談をご利用ください。
■金融機関へのリスケの依頼について
→金融庁は,3月6日,既に終了した中小企業金融円滑化法の枠組みを事実上復活させ,「既往債務の元本・金利を含めた返済猶予等の条件変更について,迅速かつ柔軟に対応すること」を金融機関に要請しました。そのため,リスケを依頼すれば金融機関が応じてくれる可能性がありますので,相談をしてみてください。
■廃業を決断した場合
→直ちに破産を選択するのではなく,経営者保証ガイドラインを利用した手続きを選択すれば,法人は破産申立てになっても,代表者は破産をせずにすむことがあります。弁護士にご相談ください。
■時差出勤を導入する際の留意点
→始終業時刻は就業規則の必要的記載事項となっています(労働基準法89条1号)。そのため,多くの場合,就業規則に基本となる始終業時刻を定めるとともに,業務の都合により繰り上げや繰り下げができる旨を規定していると思われます。そのように規定がされていれば,従業員に時差出勤を指示することができます。他方,そのような規定が存在しなければ,従業員との個別の合意をする必要があります。
■感染した従業員や感染が強く疑われる従業員に出勤停止を命じた場合の給与等支払義務
→新型コロナウイルス感染症を指定感染症として定める等の政令が,令和2年1月28日付で公布され,同年2月1日に施行されています。
そのため,新型コロナウイルスに感染して都道府県知事が行う就業制限(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第18条)により従業員に対して休業を命じる場合には,「使用者の責めに帰すべき事由による休業」とはいえませんので,給与支払義務も休業手当の支払義務もないと考えられます。
また,都道府県知事による就業制限に至っていなくても,帰国者・接触者相談センターへの相談の要件(https://www.pref.chiba.lg.jp/kenfuku/kansenshou/corona-soudancenter.html)を満たす従業員に対して出勤停止を命じる場合も,上記と同様,使用者の責めに帰すべき事由による休業とはいえませんので,給与支払義務も休業手当の支払義務もないと考えられます。
■濃厚接触者等に出勤停止を命じた場合の給与等支払義務
→帰国者・接触者相談センターへの相談の結果を踏まえても,職務の継続が可能である方について,使用者の自主的判断で休業させる場合には,一般的に「使用者の責に帰すべき事 由による休業」に当てはまりますので,少なくとも休業手当を支払う必要があると考えられます。
〔弁護士 塩野大介〕