車両保険を使うべきか?
弁護士の樋口です。
自動車を運転中に交通事故に遭ってしまった場合,自動車の修理費用等(※修理費用が車の時価額を上回る場合は,車の時価額です)の損害が発生します。
車両保険に加入していれば,これを利用することで,ご自身が加入している保険会社より,自動車の修理費用等を払ってもらうことができます。
ただ,車両保険を利用すると,通常,加入している自動車保険の等級が下がります。等級が下がると,一定の期間,年間の自動車保険料が上がります。そのため,車両保険を利用した場合に上がる年間保険料の金額と,過失割合を踏まえて相手方から支払ってもらえる修理費用等を比較した上で,車両保険を利用するか否か,判断すべきです。
以前,私が経験したケースを,具体例として,2件紹介します。
1件目は,自動車の修理費用が40万円かかるところ,過失割合は,Aさん30%:Bさん70%でした。この場合,Aさんは,自らの過失30%分,つまり,12万円(=40万円×0.3),自己負担となってしまいます。一方,車両保険を利用した場合に上がる年間保険料は,3年間で合計9万円でした。そのため,Aさんは,車両保険を利用した方が3万円お得だ(12万円>9万円)と考え,車両保険を利用しました。
2件目は,自動車の修理費用が16万円かかるところ,過失割合は,(交渉では解決できず,裁判を提起した結果)Cさん20%:Dさん80%でした。この場合,Cさんは,自らの過失20%分,つまり,3万2000円(=16万円×0.2),自己負担となってしまいます。一方,車両保険を利用した場合に上がる年間保険料は,3年間で合計12万円でした。そのため,Cさんは,車両保険を利用せず,Dさんから,修理費用として12万8000円を支払ってもらいました。
このように,車両保険を利用する場合と利用しない場合,どちらもあり得ます。車両保険を利用した場合に上がる年間保険料の金額と,過失割合を踏まえて相手方から支払ってもらえる修理費用等を,きちんと情報収集して金額を出し,比較した上で,車両保険を利用するか否か,ご決断ください。