法定相続情報一覧図の利用方法について
弁護士の樋口です。
ご家族が亡くなり,相続人として,遺産を相続したい場合,相続人であることを示す資料として,必ず,戸籍謄本一式(改正原戸籍・除籍も含みます)を,役所から入手しなければいけません。
遺産として,預貯金・有価証券・不動産が含まれていた場合,金融機関・証券会社・法務局それぞれ,相続人であることを示す資料の原本を,提示しなければいけません。写しではなく,原本です。提示した後,原本の返却を受けることはできます。
相続人であることを示す資料の原本ですが,①戸籍謄本一式,だけでなく,②法定相続情報一覧図,も含まれます。
法定相続情報一覧図は,法務局(※亡くなった方の最後の住所地等一定の要件を満たす法務局です)にて,必要書類を提示することで,入手できます。詳しくは,以下の法務局のホームページをご覧ください。
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000014.html
新型コロナウィルス感染対策防止のため,できる限り,金融機関や証券会社等へ赴くことを避け,郵送でのやりとりで相続手続を進めたい方は,多いように思われます(金融機関や証券会社を訪問し,上記戸籍謄本一式の原本を,その場で一旦提示し,コピーをとってもらうことで,原本の返却を受けることができますが,毎回1時間程度待たされることが多く,新型コロナウィルス感染対策防止を考えれば,お勧めできません。)
郵送でのやりとりで相続手続を進めるのであれば,相続人であることを示す資料の提供先が2~3社でない限り,上記②法定相続情報一覧図の利用をお勧めいたします。その理由ですが,以下が挙げられます。
●法定相続情報一覧図は,何枚でも,無料で入手できます。そのため,一度に法定相続情報一覧図を10枚程度入手し,一斉に,金融機関・証券会社等へ法定相続情報一覧図の原本を郵送することで,相続人であることを示すことができ,払戻手続を同時進行することができるため,早く進みます。
●戸籍謄本一式を入手する場合,1通あたり,450円~750円,役所へ支払わなければいけません。払戻手続を早く進めようと,戸籍謄本一式を,10セット程度入手することは,必要以上にお金がかかってしまいます。
●戸籍謄本一式原本を使い回して,相続人であることを示すとなると,金融機関・証券会社等の数だけ,郵送で往復をしなければならず,時間がかかってしまいます(例えば,遺産が10行の預貯金だけだとすると,10行それぞれ,戸籍謄本一式原本を一旦郵送して原本返却を受ける作業を,10回繰り返すことになります)。
遺産として,金融機関や証券会社が多数存在する場合,払戻手続の時間短縮を目的として,私は,法定相続情報一覧図を法務局から10枚程度入手して,金融機関や証券会社等との各払戻手続を,同時に進行させます。金融機関や証券会社が2~3社と少なければ,法定相続情報一覧図を法務局から入手する手続の時間(書類に不備がなければ,1ヶ月程度で入手できるものと見込まれます)を踏まえて,戸籍謄本一式の原本を利用して,相続人であることを示し,払戻手続を進めています。