預貯金の取引履歴を入手して,遺産を調査してみましょう
弁護士の樋口です。
7月のかなで便りにおいて,遺産を調査する方法として,「相続人であれば,金融機関に対し,戸籍謄本等相続人であることが分かる資料を提示することで,亡くなった方が預貯金を有しているか否か,金融機関より,回答してもらうことができる」旨お伝えしました。本日は,遺産を調査する方法として,もう一歩進めたお話を致します。
遺産のうち預貯金額を正確に把握するために,相続人の方々は,亡くなった時点での「残高証明書」を入手することが多いでしょう。ですが,「残高証明書」は,亡くなった時点での預貯金額を把握することしかできません。通帳自体が見当たらなかった場合,「残高証明書」とは別途,当該口座の取引履歴を,直近2年程度入手することで,相続人の方々が把握していなかった有価証券や生命保険を発見することも可能です。
証券会社と取引をしている場合,通常,取引履歴に「●証券~」と証券会社との入出金が記載されていることが多いです。また,生命保険に加入している場合,通常,取引履歴に「●」と生命保険会社との入出金が記載されていることが多いです。
亡くなった方の取引履歴に,証券会社や生命保険会社との入出金があれば,その証券会社又は生命保険会社へ,戸籍謄本等相続人であることが分かる資料を示すことで,有価証券や生命保険の有無を,回答してもらえます。実際,私は,遺産分割事件ではありませんが,相続財産管理人として,預貯金の取引履歴2年分を精査することで,当初把握していなかった証券会社や生命保険会社との取引を,新たに発見したことがあります。
もちろん,預貯金の取引履歴を入手したものの,新しい遺産が判明しないこともあります。
一定の手数料を支払う必要はございますが,生命保険契約に基づく死亡給付金や証券会社にて保管されている有価証券は高額であることが多いため,預貯金の取引履歴を入手して,遺産の調査をする価値は高いかと思います。