かなで便り Kanade news

「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」のご紹介

2021.08.25 家族問題(相続・遺言、離婚)

弁護士の樋口です。

 亡くなった方の遺産を相続をしたものの,遺産に含まれた不動産の買い手が見つからない,いわゆる「’負’動産」を抱えている方が,一定数,存在します。
 「’負’動産」を抱えている方全員が対象となるわけではありませんが,一定の条件を満たすことで,「’負’動産」を手放し,国庫へ帰属させる法律が成立しました。この法律が,「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」です。
 上記法律は,令和3年4月28日に公布されました。公布から2年以内に施行されるため,令和5年4月までに施行されますが,現状,施行日は決まっておりません。
法律の内容は,以下をクリックすると,ご覧になれます。
 001347359.pdf (moj.go.jp)

 対象となる土地は,相続又は遺贈により取得した土地です。これ以外の方法,例えば売買により取得した土地は,上記法律の対象外です(上記法律1条)。
 また,相続等により取得した土地であっても,建物が存在していたり,抵当権が設定されていたり,特定有害物質に汚染されている等の場合,対象外です(上記法律2条3項1号~5号)。

 国庫に帰属させるための手続のイメージは,以下の資料が参考になります。以下の資料は,令和3年3月に法務省が作成した資料です。

令和3年3月法務省作成資料

 以下の①~③の作業を行うことで,国庫へ帰属させることができます。
①法務大臣に対する承認申請。
 ※一定の手数料を納付します(上記法律3条2項)。
②法務大臣による審査
 ※通常の管理または処分をするにあたり過分の費用や労力を要する土地等,5つの条件いずれにも該当しないことが必要です(上記法律5条1項1号~5号)。
③申請者が,10年分の土地管理費用相当額の負担金を納付
 ※参考として,200mの国有地(宅地)の管理費用10年分は,約80万円です(柵・看板設置費用,草刈・巡回費用)。

 使い勝手が良いようには思えません。ですが,条件がクリアし,一定のお金を納めることで,次の世代へ迷惑を掛けなくて済むのであれば,上記法律が施行された後,検討の余地はあるように思われます。