かなで便り Kanade news

刑事事件における身柄拘束の流れ及び身体拘束からの解放について②

2021.11.02 刑事

 今回は,8月のかなで便りに引き続き,被疑者勾留(犯罪をしたと疑われている立場の拘束)の期間が満了した後の流れについて触れたいと思います。
 被疑者交流の満期には,処分を決める検察官は,大きく分けて「釈放」,「略式手続(罰金)」,「起訴」の3つのいずれかを選択することになります。
 ①釈放とは,文字どおり身体拘束を解かれることです。理由としては,不起訴処分,あるいは起訴猶予(罪を犯したと思われるが微罪等の理由により処分をしないこと),処分保留(捜査が未了であっても被疑者勾留期間には制限があるため,一旦釈放をしなければならないため。その後は在宅事件として捜査を継続する。)といった理由が考えられます。
 ②略式手続きとは,検察官による簡易裁判所への略式請求によって,公判手続きを経ることなく罰金(科料を含む)科す裁判(略式命令)をする手続きです。
略式請求をした当日に略式命令が出され,必ず罰金刑となりますので,それ以上の裁判手続きのための身体拘束は不要になりますので,この時点で釈放になります。
 ③起訴とは,そのまま拘束が続き裁判を受けてもらうことを意味します。裁判を待つ立場の者を被告人といいます(民事事件の裁判の場合は,被告といいます。)。被告人の立場で拘束を受けることを被告人勾留といいます。

 被告人勾留は,裁判が開かれ,判決が出されるまで原則続くことになります。
 単純な認め事件であれば,初回の公判期日(裁判)が指定されるのは,起訴日から約1か月半から2か月後になると思います
 初回公判期日で審理は全て終了し,約1,2週間後に判決という流れが一般的ではないでしょうか。
 被告人勾留では,既に捜査は終了しているため,取調べは行われずに裁判を待つことになります。裁判を待つだけの立場を鑑み,身体解放を行うために用意されている制度として,保釈が存在します。
 被告人側から保釈の申立を行い,裁判所がこれ以上の身体拘束が不要と判断された場合身体拘束から解放されます。その際,裁判所が決定をした保釈保証金(保釈金)を納付することも必要になります。
 身体拘束からの解放により,判決が言い渡されるまでの期間を自宅等指定された場所で過ごすことができます。保釈保証金は,逃亡をした場合や裁判が定めた遵守事項を守られないときには,没収をされるという性質をもつ金銭です。
 そのため,被告人が仮に逃亡したいと思ったとしても,没収の不利益を考えて逃亡を断念する程の価値・金額である必要があります。
 そのため,被告人の社会的地位や財産などの個々の事情により金額も大きく変わることになります。大変なお金持ちであれば,それなりの金額になります。例えば,元日産の社長であったカルロスゴーン氏の保釈保証金は10億円であったと言われています。
 彼は,国外へ逃亡していますので,その金銭は没収をされています。
 一般的な会社員であれば,150万円から300万円程度の間で保釈金が指定されることが多いと思われます。
 なお,保釈金については,保釈金を貸してくれる団体なども存在します(ただし,手数料などもかかるようです)。
 また,近時は保釈保証金を裁判所の出納課に直接納付する方法にかわり電子納付により遠方の裁判所に対しても即座に納付をし,より迅速に身体解放につなげることも可能になっています。
 保釈申立に際しては,単に申立をするだけに留まらず,証拠隠滅や逃亡の怖れがないこと,それを裏付ける根拠や証拠等,説得的に論じる必要があります。
 身柄拘束により受ける不利益は計り知れないものがあります。速やかな身体拘束からの解放実現のためにも,専門家である弁護人(弁護士)にご相談ください。

以上

〔弁護士 相田敦史〕