経営者保証ガイドラインを利用する場合の特別清算手続の活用について
弁護士の樋口です。
中小企業の経営者が、会社の保証債務を整理したい場合、破産手続ではなく、まずは経営者保証に関するガイドラインを利用できないか、検討すべきです。
以下の中小企業庁のHPやパンフレットにも記載されておりますが、経営者保証ガイドラインを利用できた場合の主なメリットとして、以下の①と②が挙げられるためです。
① 破産手続と異なり、保証債務整理を行った事実等が、信用情報登録機関に、報告・登録されないこと。
② 一定の要件を満たし、債権者の方々の合意を得ることができれば、99万円を超える財産を、手元に残すことができる可能性があること。
経営者保証 | 中小企業庁
231213_02.pdf
以下のURLのとおり、経営者保証ガイドラインを利用するためには、様々な要件を満たす必要がございます。
経営者保証に関するガイドライン
上記要件の1つとして、主たる債務者である会社が、法的債務整理手続又は準則型私的整理手続を、行う必要があります(ガイドライン7項(1)ロ))。
法的債務整理手続の1つとして、破産手続が挙げられますが、その他にも特別清算手続も含まれます。
特別清算は、会社法510条以降に規定され、債務超過の疑いがある場合等に認められた手続です。公租公課や優先債権の全額弁済が可能か、債務免除益課税を乗り越えられるか、破産法の否認対象行為がないか、といった観点から、特別清算が可能か検討することになります。
上記②のメリットを実現したい場合、主たる債務者である会社の法的債務整理手続を行うのであれば、債権者の方々の同意を得ることが前提となりますが、破産手続ではなく、特別清算を選択した方が良いと考えます。
債権者の方々に対する会社からの弁済額は、破産管財人の報酬が発生しない分、法人県民税・市県民税の均等割の支出を考慮しても、(債務免除益課税が発生しなければ)破産手続よりも、特別清算手続の方が多くなるものと見込まれます。債権者の方々に対する会社からの弁済額(回収見込額)が多い方が、上記②のメリットを追求しやすくなります。上記②はインセンティブ資産と表現されるのですが、インセンティブ資産は、回収見込額の増加額の範囲内で、認められるためです。
インセンティブ資産に関しては、次回以降のかなで便りにおいて触れられれば、と思います。