民事訴訟法の改正について
弁護士の樋口です。
新聞やニュース等で報道されましたが,本年5月18日,民事訴訟法との一部を改正する法律が成立しました。改正の主たる目的は,提訴から判決までの手続の全面的なオンライン化です。
法律が成立しても,実施されるまでには時間がかかります。法務省によると,段階的に整備し,2025年度までに,完全実施を目指すとのことです。
改正に関する要綱案,改正法律案は,以下のURLにてご覧になれます。
法務省:「民事訴訟法(IT化関係)等の改正に関する要綱案」(令和4年1月28日) (moj.go.jp)
民事訴訟法等の一部を改正する法律案
私の業務に置き換えて,上記法改正に伴うオンライン化により,どのような影響を与えるか,考えてみました。なお,上記法改正でオンライン化以外の改正もございますが,割愛いたします。
これまで,裁判所へ文書を提出する方法は,郵送またはファックスでした。改正に伴い,提出方法がオンラインでの手続が可能となります。可能と表現しましたが,弁護士の場合,オンラインでの提出が義務となります。この点に関しては,結局,事件記録として書面で管理する方法を続けるでしょうから,特にメリットはないと思いました。
これまで,民事事件の「口頭弁論」という期日が実施される場合,裁判所へ赴かなければいけませんでした。改正に伴い,ウェブ会議を利用することができ,証人尋問についても裁判所や当事者が認めたケースではウェブ会議を活用できます。(証人尋問のウェブ会議の利用は要検討ですが)裁判所へ赴かずに事務所で対応できるわけですから,ウェブ会議の利用は,労働時間の減少に繋がり,非常に助かります。
実は,民事事件の「口頭弁論」という期日ではなく,「書面による準備手続」という期日では,現在,ウェブ会議が利用されております。千葉県内の裁判所の場合,本庁,佐倉支部,松戸支部,木更津支部,八日支部において,ウェブ会議が利用されております。やはり,便利です。
そして,このウェブ会議,上記法改正に伴い,民事事件だけでなく,家事事件でも活用できることになりました。
これまでは,離婚や遺産分割等の調停手続においては,原則として,裁判所へ赴く必要がありました。原則と述べたのは,遠方の裁判所の場合,裁判所の判断次第ではございますが,事務所から電話で参加することもできたからです。
上記法改正により,離婚や遺産分割等の調停手続においても,ウェブ会議を利用することで,裁判所へ赴く必要がなくなります。DVによる離婚事件の場合,裁判所へ赴くということは相手方と接触するリスクが出てきます。住所を秘匿していた場合,相手方との接触を避けることは必須です。調停手続によるウェブ会議の利用は,依頼者の方のためにもメリットがあると思いました。