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交通事故紛争処理センターの利用方法

2020.10.29 交通事故

  弁護士の樋口です。
  交通事故に遭われた被害者の方より,加害者側に対する賠償手続につき,ご依頼を受けることがあります。被害者の方が交通事故で怪我をされていた場合,通院期間に応じて,通院に伴う慰謝料(以下「通院慰謝料」といいます。)の支払を,加害者側に求めることができます。この点,交通事故の賠償手続を進めるにあたり,多くの場合,加害者が加入している自動車保険会社と交渉を行います。

  通院慰謝料の金額ですが,訴訟を提起して裁判所により認定される金額を,予想することができます。通称「赤い本」という冊子に,裁判所により認定される基本的な通院慰謝料(※様々な事情を考慮して,多少変動することもあります)の金額が記載されているためです。そのため,通常であれば,「赤い本」基準の通院慰謝料の金額を,加害者が加入している自動車保険会社に対して,請求します。

  これに対して,多くの自動車保険会社は,「赤い本」基準の8割~9割の慰謝料を支払う旨の回答をします。この回答の理由としてよく挙がるのが,「訴訟を提起しておらず,交渉段階のため」です。この場合,交渉での早期解決という選択をせず,「赤い本」基準の通院慰謝料を受け取るためには,交渉での解決を断念し,第三者を交えた別の解決方法を選ぶ他ありません。

  加害者側の保険会社との争点が,通院慰謝料の金額のみ,すなわち,【「赤い本」基準10割か,それとも8割~9割か】であれば,交通事故紛争処理センターによる和解あっ旋手続の利用をお勧めします。

  交通事故紛争処理センターによる和解あっ旋手続は,第三者である弁護士が介入し,交通事故の解決を図るよう,促す制度です。
(http://www.jcstad.or.jp/guidance/)
  そして,【訴訟を提起すれば「赤い本」基準10割の通院慰謝料が認められるケース】であれば,経験上,上記第三者である弁護士は,加害者側の保険会社に対し,「赤い本」基準10割の通院慰謝料を支払うように促すことが多いです。そして,これも経験上ですが,加害者側の保険会社は,上記第三者である弁護士の促しに応じることが多いです。

  一般的に,交通事故紛争処理センターによる和解あっ旋手続の方が,訴訟の提起よりも,解決までの時間が短いと思われます。事故態様が争点の場合は訴訟提起による解決を図った方が良いでしょうが,上記のようなケース以外でも,交通事故紛争処理センターによる和解あっ旋手続の方が良いケースもあるでしょう。
  交渉で解決できない場合,解決の選択肢として,訴訟提起だけでなく,交通事故紛争処理センターによる和解あっ旋手続も,検討された方が良いかと思います。